耳垢

外耳道と呼ばれる部位(耳の穴の入り口~鼓膜)より剥がれ落ちた表皮と皮脂腺あるいは耳垢線からの分泌腺からの分泌物、さらには埃などが混じった物を耳垢と言います。

耳垢は誰の耳の中でも溜まるものですが、タイプとして乾性耳垢と湿性耳垢の2種類があります。前者であれば、パサパサした耳垢なので何もしなくても外耳道から自然と排出されるようになります。一方の後者は、外耳道に留まりやすく固まりやすいという特徴があります。このような場合、綿棒で耳掃除をしたつもりでもさらに奥へ押し込んでしまう、外耳道で詰まり気味の耳垢に入浴やプール等で水が入ることで耳垢が膨張するなどして、耳垢塞栓が起きることがあります。このような状態になると、耳が詰まる、音がこもる、聞こえにくいなど、耳の閉塞感を訴えるようになります。

とくに湿性耳垢の方は、耳垢腺等からの分泌量が乾性耳垢と比べ多く、何日かに1回程度は耳掃除が必要とされています。ただ耳垢線は外耳道の半分より外側にしか存在しないので、耳掃除で使用する綿棒や耳かきは奥まで押し込まず、手前を丁寧に行うようにしてください。

外耳炎

外耳道に炎症が起きている状態なので外耳道炎とも呼ばれます。外耳道に傷がつく(耳かきで引っ掻く 等)、水(お風呂、プール、海水浴 等)が入る等によって、細菌(黄色ブドウ球菌 等)に感染するなどして発症します。

主な症状は、外耳道のかゆみや痛み、湿疹などです。悪化すると、耳だれ、耳下のリンパ節が腫れるといったことがあります。

治療法については、抗菌薬(点耳薬、軟膏)を使用し、症状の程度がひどい場合は、抗炎症薬や鎮痛薬も併用していきます。また場合によっては、切開して、排膿することもあります。

中耳炎

中耳は、鼓膜、鼓室、耳管が含まれます。これらに炎症がみられている状態が中耳炎です。一口に中耳炎と言いましても、急性中耳炎、慢性中耳炎、滲出性中耳炎など、種類はいくつかあります。

急性中耳炎

乳幼児が発症しやすい耳の疾患で、上気道炎(かぜ)をきっかけとして発症することが多いです。そもそも中耳に属する耳管は、鼻の奥とつながっているのですが、乳幼児の耳管は、成長途上にあって、太くて短く、水平に近いということがあります。感染経路としては、ウイルス等による上気道感染に併発した細菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌 等)が、耳管から鼓室に入り込むことで引き起こされることが多いです。

主な症状は、発熱、耳の痛み、難聴(聞こえが悪い)、耳が詰まる感じ(耳閉塞感)、耳だれなどです。

治療に関してですが、軽症であれば経過観察、中等症以上であれば、抗菌薬(抗生物質)を投与していきます。なお重症化している場合は、鼓膜を切開して膿を排出していきます(鼓膜切開術)。

滲出性中耳炎

急性中耳炎が治りきらない、あるいは鼻炎、副鼻腔炎、アデノイド増殖症 等による感染をきっかけに発症するとされ、それらによって中耳に浸出液が貯留している状態が滲出性中耳炎です。乳幼児と高齢者によく見受けられます。

主な症状ですが、中耳が浸出液に貯留することで、難聴(聞こえが悪い)、耳閉塞感(耳が詰まった感じ)がみられるようになります。ちなみに急性中耳炎のような、発熱、耳の痛みのような症状が現れることはありません。なお乳幼児では、両側の耳で発症することが多く、これが原因で言語発達が遅れることもありますので注意が必要です。

治療に関してですが、基本は経過観察になります。その結果、医師が必要と判断すれば治療を行います。この場合、保存療法と手術療法が行われます。保存療法に関しては、原因疾患があれば抗菌薬の投与などの薬物療法、粘液溶解薬を使用することもあります。また浸出液の貯留の原因となる鼓室内の陰圧化を改善するための耳管通気などもしていきます。

手術が必要とされる場合は、鼓膜を切開してチューブを通し、中耳内の浸出液を排出していく、鼓膜換気チューブ留置術などが行われます。

慢性中耳炎

急性中耳炎や滲出性中耳炎などの慢性化等によって引き起こされるとされ、原因菌としては黄色ブドウ球菌、緑膿菌などが挙げられます。主な症状ですが、鼓膜に穴が開くようになるので、耳が聞こえにくい(伝音難聴)、耳鳴りのほか、耳垂れ(耳漏)等が現れるようになります。急性中耳炎のような耳の痛み、発熱などはみられにくいです。

治療方法としては、保存療法と手術療法があります。前者では、抗菌薬(点耳、内服薬 等)の使用、耳管に空気を通すこと(耳管通気)で、膿を排出していきます。ただ完治をさせるには手術療法が必要で、この場合は鼓膜形成術や鼓室形成術などが行われます。

難聴

音が聞こえない、あるいは聞き取りにくいといったことで日常生活に支障をきたしている聴力障害のことを難聴と言います。難聴と一口に言いましても、障害を受けている部位によって、伝音難聴、感音難聴、混合性難聴に分けられます。

伝音難聴

伝音難聴は、外耳から中耳の部分が障害を受けることで起きるとされるもので、難聴の程度は軽度~中等度が大半で、耳閉塞感(耳が詰まった感じ)、通常レベルの音が聞こえにくいなどの症状がみられます。原因疾患としては、急性中耳炎、滲出性中耳炎、耳垢栓塞、真珠腫性中耳炎などが挙げられます。

感音難聴

感音難聴は、内耳の奥、いわゆる中枢側で障害が起きていることによる難聴です。その中でも内耳~らせん神経節の間に障害が起きることによる難聴を内耳性難聴、らせん神経節よりも奥(中枢)側での障害による難聴を後迷路性難聴と呼びます。

原因疾患に関してですが、内耳性は、突発性難聴、加齢性難聴、メニエール病などが含まれます。一方の後者は、聴神経腫瘍などの腫瘍性疾患、多発性硬化症などの疾患が挙げられます。

なお感音難聴の症状としては、自分の声の大きさがわからなくなるので大声で話す、音の内容が聞き取れないなどの症状がみられます。

混合性難聴

混合性難聴は、上記(伝音難聴、感音難聴)の2つの範囲で障害がみられることで起きる難聴になります。そのため伝音と感音の両方の症状がみられ、難聴の程度は軽度~重度に至ることもあります。原因疾患としては、進行した耳硬化症などがあります。

いずれにしましても、日常生活に不便を感じるほど、聞こえづらい、聞き取りにくいといった症状がある場合は、速やかに当院をご受診ください。

耳鳴り

正式には耳鳴(じめい)と呼ばれます。これは実際に何かしらの音が出ていないのにも関わらず、耳の中で音が鳴っていると感じている状態を言います。この場合、大きく自覚的耳鳴と他覚的耳鳴に分類されます。

自覚的耳鳴

自覚的耳鳴は、体内に音源があるわけではないのに本人には音が聞こえるという状態です。この場合、さらに末梢性と中枢性に分けられます。末梢性の原因としては、突発性難聴、加齢性難聴、メニエール病、外耳道炎、中耳炎などがあります。中枢性は、高血圧や聴神経腫瘍等の腫瘍性疾患などによって引き起こされます。

他覚的耳鳴

一方の他覚的耳鳴は、体内から実際に音が出ていて、それが外からも聞こえることがあるとされる耳鳴りです。これも大きく2つに分類されます。ひとつは拍動性耳鳴で、一定のリズムで打たれるとされる耳鳴りです。耳の病気や血管の異常によって起きやすいとされ、中耳腫瘍、(脳などの)血管の形態や走行の異常などが挙げられます。もうひとつは、非拍動性耳鳴です。これは、筋肉がけいれんするなどして起きる耳鳴りです。原因としては、顔面神経麻痺(アブミ骨筋性耳鳴)、口蓋ミオクローヌス、鼓膜張筋けいれんなどがあります。

なお耳鳴の大半は、自覚的耳鳴によるものです。気になる耳鳴りを何とかしたいという方は、当院にて一度は耳鳴検査を受けるなどして、原因を特定させるようにしてください。

めまい

体がグルグル回る、フワフワする、気が遠くなる等の症状がみられる状態がめまいです。このめまいは、障害部位の有無によって、前庭性(障害部位がある)と非前庭性(循環器疾患(高血圧 等)や精神疾患(うつ病 等)によるめまい)に分類されます。さらに前庭性は、末梢性と中枢性のめまいに分けられます。

末梢性めまいとは、主に内耳(半規管、卵形嚢・球形嚢、蝸牛)に障害があるとされる場合に起きるとされるめまいです。一方の中枢性めまいは、脳や脊髄などの中枢神経が障害されていることで起きるめまいになります。

このうち耳鼻咽喉科領域に関係するのが末梢性めまいです。特徴としては、グルグル目が回る、フワフワするなどの症状が現れます。この状態が短時間で治まることもあれば、数時間~数日続くこともあります。原因としては、良性発作頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎、突発性難聴、内耳炎などがあります。一方の中枢性めまい(原因は、脳梗塞、聴神経腫瘍 等)であっても、フワフワしためまいや回転性めまいがみられることもあるので、原因が特定できなくても気になるめまい等の症状があれば、当院を一度ご受診ください。