アレルギー性鼻炎

アレルギー反応を引き起こす原因物質(アレルゲン)が、鼻の粘膜に付着するなどして、炎症が起きるほか、それを排除しようとくしゃみ、鼻水、鼻づまり等の症状もみられるのがアレルギー性鼻炎です。

同疾患は、季節に関係なく1年中症状が続く通年性アレルギー性鼻炎、限定した期間にのみ症状が現れる季節性アレルギー性鼻炎に分けられます。通年性の患者さんのアレルゲンとしては、ハウスダストやペットの毛などです。また季節性に関しては、主に花粉によるものです。ただ患者さんによってアレルゲンとなる花粉は異なります。例えば、スギやヒノキであれば春先、イネ科の植物であれば夏、ヨモギやブタクサであれば秋の季節に限定して上記の症状が現れるようになります。

治療に関してですが、まずは原因を特定させ、アレルゲンを除去あるいは回避する環境を整えます。対症療法としては、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬の内服、鼻づまりの症状が強ければ、噴霧用のステロイド薬を使用していきます。

副鼻腔炎(蓄膿)

鼻腔の周囲にある4つの空洞(前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、上顎洞)を副鼻腔といいます。これら粘膜にアレルギーや何かしらの病原体が感染するなどして炎症が起きている状態が副鼻腔炎です。

なお風邪などのウイルス感染で急性的に発症するのが急性副鼻腔炎、副鼻腔の炎症が3ヵ月以上継続していると慢性副鼻腔炎(急性副鼻腔炎がきっかけのことが多い)、真菌(アスペルギルス、カンジダ 等)に感染して発症する副鼻腔真菌症、虫歯や歯周病の炎症が上顎洞に及ぶことで発症する歯性上顎洞炎等の種類に分けられます。

主な症状ですが、鼻づまり(粘膜の腫脹、鼻茸の影響 等)や鼻水(膿を含んだ黄色い鼻水 等)・後鼻漏、炎症を起こしている部位(頬、おでこ、鼻根部 等)の痛み、嗅覚障害、頭痛(頭が重い)などがみられるようになります。

治療に関してですが、薬液(少量のステロイド、抗菌薬 等)を霧状にして、口や鼻から吸引し、副鼻腔に届くようにするネブライザー療法などが行われます。

慢性副鼻腔炎に対する少量マクロライド療法について

慢性副鼻腔炎、いわゆる「蓄膿症」に対するマクロライド少量長期投与という治療法があるのをご存じでしょうか?ここではこの治療法についてご説明します。

マクロライドは抗生物質の一種で、通常は細菌感染に対し使用されるお薬です。この抗生物質を通常量の半量で長期間内服する治療法で、慢性副鼻腔炎の有効な治療法として確立されています。もちろん、半量では抗菌効果は期待できません。この治療法では抗炎症作用や免疫調整作用は期待され、炎症をおこす物質や分泌物を減らしたり、分泌物を排泄する線毛運動を促進する効果があります。

当院では副鼻腔炎に対し、原則3カ月を目安にマクロライド少量長期投与を行っています。治療開始前と治療開始3カ月後に副鼻腔CTを撮影し、効果を判定してます。もちろんすべての副鼻腔炎に効果が期待できるわけではありませんが、きちんとした服薬と定期的な通院により7割以上の方で十分な効果を認めています。ただし、鼻茸(鼻ポリープ)のある方や、好酸球性副鼻腔炎、中等度以上のアレルギー性鼻炎や気管支喘息を合併されている方では効きにくいと言われています。

また、小児に対しても大人と同様に有効な治療であると考えられています。ただし、治療期間が長いことや、治療継続中にも感冒などにより急性増悪を起こしやすい年齢のため、なかなか治療が進まないこともあります。お子様の場合には状況に応じて治療期間の検討を行う必要があります。

さらに、マクロライド少量長期投与は副鼻腔炎の再発時にも同程度の効果が期待できる治療法です。蓄膿症は手術しかないと諦めてしまっている方や、どうせ治らないからと治療に消極的な方も、一度診察を受けてみてはいかがでしょうか。

鼻中隔弯曲症

鼻腔を左右に隔てている仕切り版のような存在なのが鼻中隔です。この鼻中隔が弯曲していることで、日常生活に影響を及ぼしている状態が鼻中隔弯曲症です。曲がってしまう原因に関しては、成長に伴って起きることが多いですが、外傷などによって発症することもあります。

よくみられる症状ですが、鼻づまり(鼻閉)をきっかけとして、鼻・副鼻腔炎が併発しやすくなります。そのほか、鼻出血、嗅覚障害、頭痛などもみられるようになります。

治療に関してですが、症状が強く出ている場合は、手術療法を行います。具体的には、弯曲した部分(軟骨)を切除し、鼻中隔を適切とされる位置(真っすぐな状態)まで矯正していきます。

嗅覚障害

臭いを感じることを嗅覚と言いますが、臭いがしない、臭いが変と感じられるのであれば嗅覚障害の可能性があります。この場合、量的異常と質的異常の2つのタイプに分けられます。量的異常とは、臭いがしない、臭いを感じるのはとても弱々しい状態にあります。質的異常とは、臭いの感じ方が異常となっている状態です。具体的には異嗅症(本来の臭いとは異なる臭いがする 等)、存在するはずのない臭いを感じる、臭いを強く感じてしまうなどです。なお嗅覚障害の多くの患者さんは、量的異常を訴えることが多いです。

原因に関しては大きく3つに分類されます。ひとつは、気導性嗅覚障害と呼ばれるもので、鼻腔や副鼻腔に何らかの病気が起きることで嗅細胞まで臭いの分子が届かないことで起きます。原因としては、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、急性・慢性鼻炎、鼻中隔弯曲症などが挙げられます。この場合、治療によって嗅覚が戻るケースが大半です。2つ目は、嗅神経性嗅覚障害です。これは臭いを伝える役割をする嗅神経がダメージを受けている状態です。原因としてはウイルス感染(感冒後嗅覚障害)、篩骨洞炎の慢性副鼻腔炎、頭部や顔面の外傷などによって引き起こされます。3つ目は中枢性嗅覚障害になります。これは脳に臭いが伝わるとされる嗅覚路が障害を受けることで発生します。原因としては、脳腫瘍、頭部外傷、神経変性疾患(アルツハイマー、パーキンソン病 等)などがあります。

治療に関してですが、原因疾患があれば、それに対する治療が中心となります。また鼻炎など炎症による嗅覚障害であれば、ステロイドの点鼻薬を使用していきます。

鼻出血

一般的には鼻血と呼ばれることが多いです。鼻から出血が起きている状態で、原因の多くは鼻粘膜への物理的な刺激です。この場合、鼻をほじる、鼻を強くかむ、くしゃみ、外傷などによって発症します。上記以外では、何らかの原因疾患があって発症することがあります。例えば、アレルギー性鼻炎・急性鼻炎、鼻腔や副鼻腔に腫瘍がみられる、小さい子に起きやすいとされる鼻腔への異物混入などです。また全身疾患の影響で鼻血が出やすくなるということがあります。具体的には、血液疾患(白血病、血友病 等)、高血圧、腎不全、肝不全、薬剤(抗凝固薬、抗血小板薬 等)の影響といったこともあります。

原因がよくわからない鼻出血に悩まれているという場合は、一度当院をご受診ください。